ハラスメント防止に関する研修は全ての従業員を対象にしないと行けませんか?
セクハラの判決ですが次のようなものがあります。
この判決では、中途採用者には研修を実施していなかったことで、指導・教育義務を一部怠っていたものととして、会社の安全配慮義務違反を認定しています。
このようなことが起こらないためにも、研修等は全従業員を対象にすべきです。
多数の従業員を雇用する会社として、その雇用契約上就業環境を整備し、これら従業員が就労しやすい環境を保つよう配慮する信義則上の義務を負い、その一環としてセクハラ行為が起こらないよう従業員に対して研修等を実施し指導・教育すべき義務を負うものというべきである。
しかるに、会社は、新人社員に対してはセクハラ防止に係る研修を実施しているものの、上司Yのような中途採用者に対してはこれを実施していなかったものと認められ、上記指導・教育義務を一部懈怠していたものと言うべきである。そして、(中略)Yの違法なセクハラ行為は、その不適切であることが比較的明白な態様といえ、会社がYら中途採用者に対してもこうした指導・教育を適切に実施していれば、Yが被害者に対してこれらの行為に及ぶことを未然に防ぐことができた蓋然性が高いといえるから、会社は、債務不履行に基づき、Yのセクハラ行為により被害者に生じた損害を賠償すべき責任を負うと解するのが相当である。(東京地判決平成28年12月21日)
懈怠(けたい):なまけること
蓋然性(がいぜんせい):ある事柄が起こる確実性
としています。この判決では、中途採用者には研修を実施していなかったことで、指導・教育義務を一部怠っていたものととして、会社の安全配慮義務違反を認定しています。
このようなことが起こらないためにも、研修等は全従業員を対象にすべきです。